英国見聞録003 地下鉄にて

前回の電車のお話に続いて,今回は地下鉄について書いてみたいと思います。
よくアメリカの地下鉄は危険だといわれます。
みんながいうんだから,そうなんでしょうね。
私はアメリカの地下鉄に乗ったことがないので,知らないんですが。
それはともかく,イギリスの地下鉄は,まぁ安全です。
もちろん日本ほどではないかもしれないけど,
いやな思いや危険な思いをしたことはありませんでしたね。
ただ,日本の地下鉄との違いは,よく「ものもらい」の人がいるということです。
たいてい女の人で,みすぼらしい格好をして,小さな子どもを抱えながら,
首から「パンを買うお金をください」というようなことを書いたカードをぶら下げています。
そして,たぶん1日中,地下鉄に乗っているのです。
環状線みたいなところなら,1枚の切符でずっと乗っていられるでしょ。
そして車両を渡り歩くと,そのうちお客さんも入れ替わって,
また新しい人たちに出会えるというわけです。
彼女たちは,こうして地下鉄のお客さんに目で訴えかけながら,
少しずつお金を恵んでもらっていました。
何回かこういう人たちを見ましたが,僕の方にはあんまり来ませんでしたね。
外国人だったからか,貧乏そうに見えたからか,たぶんその両方なんでしょう。


でも,あるときいかにも貧相な男の人に,泣きそうな顔で
「1ポンドくれませんか」っていわれました。
その人は地下鉄の乗客のみんなに,そうやっていっていました。
「男の人なんて珍しいなぁ」と思って見ていたら,僕がおりるときに,
その人も地下鉄からおりてきました。
で,たまたま同じ方向に歩いていったら,ちょっと奥まったところに入った瞬間に,
地下鉄の中で見たのとはうって変わって生き生きとした雰囲気で,
悠々とたばこを吹かしながら,たぶん仲間だと思われる女の人に,
「こんなにゲットできたぜ」というようなことを言っていました。
ま,別にいいんだけど,なんだか,してやられたような感じでしたね。