英国見聞録029 だれがなんといってもまずいです。

前回に続いて,料理のお話です。
下宿のおばさんは,子どもたちにはきびしいけれど,
僕にはとってもよくしてくれました。
おばさんの旦那さんは,数年前にガンかなんかで亡くなっていました。
もちろん離婚率が日本よりずっとずっと高いイギリスのことですから,
夫婦そろってない家というのは別に珍しくないんですが,
おばさんの場合は離婚というわけではなかったので,
ときたまさみしそうに,僕に旦那さんの思い出を語ってくれたものでした。
僕も,そんなおばさんが好きだったんですが,
彼女の料理だけは,いつまでたってもなれませんでした。
これは,たぶんおばさんが悪いのではなく,
イギリスの家庭どこへ行っても同じだったんだろうと思います。
そういう国なんです。

で,おばさんの料理のうち,これはもう絶対やだというのが3つありました。
今回は,そのうちのひとつ「恐怖のスパゲッティ」についてのお話を書きましょう。
このスパゲッティは,まず茹ですぎなので麺にこしがなく,くにゃくにゃしています。
したがってフォークで食べようとしても,あいだからぬるっと落ちてしまいます。
そして,なんだかよくわからないミートソースのようなものが少しかかっています。
これがまた,あんまり味がないのです。
しかもその量も少ないので,途中から,なにもかかっていない麺を食べることになってしまいます。
そして,いわゆる具ですが,これまた理由はさっぱりわかりませんが,
なまのキュウリが3切ればかりのっているんです。
ね,こんなスパゲッティが出てきたら,ちょっといやでしょ。
僕なんか,ある日,この恐怖のスパゲッティが夕御飯だって,
いやいやながらも,まずさを表情に出さないで食べていたら,
おばさんと子どもたちが途中から出かけていったので,すかさず犬にあげました。
やれやれ。