英国見聞録007 バスに乗るのはたいへんだ

イギリスでは,大学までいつもバスで通っていました。
これは慣れるまで,とてもたいへんでした。
まず,バス停に名前がついていないんです。
車内アナウンスもないし,もちろん料金表なんかもはってありません。
これがどういうことかというと,まずバスに乗ることはできます。
バス停に立っていればいいんだから。
しかし,降りることが難しいんです。
だって,例えばバーミンガム大学へ行きたいとしましょう。
イギリスのバスはすべて路線によって番号が付いていますから,
地図を見たり,人に聞いたりすれば何番のバスに乗ればよいかはわかります。
でも,降りるときにどこでおりたらよいかわからないでしょ。
だから,たとえば僕が下宿のおばさんに行き方を聞いたときも,
「75番のバスに乗ってしばらく行くと(!)大きなビルが見えるから(!!),
次のバス停でおりるんだよ。
そしたら,2番のバスに乗り換えて,右手に木がいっぱいあるところ(!!!)
で降りやぁ」といわれました。
ね,困るでしょ,これじゃあ。
しかたなく最初の何回かは,運転手さんに「バーミンガム大学に行きたいので,
どこでおりたらいいか,ちゃんと教えてくださいね」ってお願いしてから乗っていました。

ちなみにイギリスのバスには,日本のような降りるときに鳴らすブザーもありません。
じゃあ,どうやっておりることを運転手さんに知らせるのか。
最初はとても不安でしたが,すぐにその答えに気付きました。
簡単なことです。
自分がそろそろ降りるという頃になったら,席を立って運転手さんの近くに行くのです。
すると,その気配を察知した運転手さんが,ちゃんとバス停で止まってくれる
という仕組みです。
このことにすぐに気付いたのはいいのですが,やっぱりなんか不安でしょ。
僕も慣れるまで,必要以上に早く運転手さんのところに行って,
これ見よがしにバックミラーに顔をうつしたり,せきばらいをしたりして
必死にアピールしてたもんですよ。


そういえば先ほど,乗るのは簡単だと書きましたが,
大きなバス停になると,いくつもの路線のバスが通っていきます。
そんなときに,バス停ごとに全部のバスがいちいち止まっていたのではたいへんなので,
待っているお客さんは,自分が乗る番号のバスが来たら,
親指を立てて運転手さんに合図をするのです。
それをしないと,いくら待っていても,すべて素通りされちゃう事もあるんですよ。
でも,なんかこうやって親指でバスを止めるのは,かっこよく思えましたね。
ちなみにイギリスでは,タクシーを止めるときにも,同じように指を立てて合図をします。


ついでにバスのことをもうちょっと書きますね。
僕は大学へはいつもバスで通っていましたが,これが本当によく遅れるんです。
ま,はっきり言って,時間通りにはまず来ないって感じです。
ある日の朝,いつものようにバス停でバスを待っていました。
すると,5分ほど遅れてバスがやってきました。
雨もぱらついてきていたのでやれやれと思っていたら,
満員だったためにバスはそのまま通り過ぎていきました。
ときどきこういうことがあります。
しばらくして次のバスがくると,今度はどこかの学校の生徒通学用の特別バスで,
これまた乗れませんでした。
もうこの段階で予定より30分ほど遅れています。
僕も,他の人も雨の中をずっと待っています。
こうなってくると,だんだん祈るような気持ちになります。
こんな毎日をくり返していると,イギリス人が電車やバスの遅れに
寛大になるのもよくわかります。
乗れただけでホッとするんだもん。
ちなみに日本の新幹線は,年間を平均して時刻表との誤差は1分もないそうなんですが,
それをイギリス人に話したら,信じられないという顔をしていましたよ。