英国見聞録014 アラーム・パニック


イギリスの治安は,諸外国の中では,まぁいいほうではないでしょうか。
でも,日本に比べたら,やっぱりよいとはいえません。
たとえば車にしても,日本ではあちこちになにげなく路上駐車してあるけど,
イギリスではたいていそういう車にはブザーが付いていたりして,
盗もうと思うと大きな音が鳴り響いたり,
ハンドルにロックがしてあって,動かないようになっていたりします。
家にしても同じように,たいていの家に防犯ブザーが付いています。
カギを開けて家に入っても,玄関のところで警報機の暗証番号を正しく押さないと,
これまたアラームが鳴り響くことになります。


僕が下宿を初めて1週間ぐらいたったころでした。
下宿していた家のカギはもらっていましので,
いつものようになにげなくカギを開けて家に入っていきました。
安全のために家の中におばさんとかがいるときでも,カギがかってあるんです。
もちろん,そういうときは警報機は解除されているんですけどね。
で,これまたなにげなく警報機を見ると,解除されていないのです。
つまり,家には誰もいないということになります。
あわてましたねぇ。
だって,暗証番号を教えてもらってなかったんですから。
あわてること数十秒。
警報機が,僕のことを感知してとても大きな音でアラームを鳴らし始めました。
もう,パニックです。
警察が来たらどうしよう,
下宿してるんだっていっても信じてもらえなかったらどうしよう,
怪しい外国人だって思われたらどうしよう,って感じです。
だいたい,イギリスで暮らし初めて,まだ10日ほどです。
この状況を英語で説明できるかどうかもわかりません。
いっそ逃げちゃおうかとも思いましたが,
それこそもし途中でつかまったら,いいわけできないような気がして。


僕は何もできないまま,なるようになれって開き直りました。
しかし,ふと気が付くと,もうアラームが鳴り始めて5分以上たっています。
でも,警察はおろか,近所の人も誰もやってきません。
10分たっても,変わりません。
なんだかあきれちゃいましたね。
結局アラームは,下宿のおばさんが帰ってくるまで30分以上鳴りっぱなしでした。
おばさんにアラームをとめてもらった後,ふと気になってたずねてみました。
「こんなに大きな音が鳴っているのに,まわりの人は気にしないのかなぁ」って。
おばさんいわく,「へたにかかわって自分が被害にあったらいやだって思ってるんだよ」
なるほど。
やっぱり日本とは違うんだということを再認識しました。
外国は治安が悪いというのはよくいわれるけど,
意外とこんなところにその原因があるような気がします。